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「男はつらいよ」全48作を完全制覇への道!!
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第12作 私の寅さん 1973年(昭和48年)

12.jpgその頃――――
未曾有の大飢饉に葛飾郡柴又村の民は
苦しんでいた――――

菜種油を悪徳商人に買占めされ、灯りを失った柴又村の民衆。国賊として追われる"車寅次郎"の妹・櫻に乱暴を働く買占め商人。そこへ現われた車寅次郎。「この面体、よもや見忘れではなかろうよ。よくも私達一家にむごい仕打ちをしてくれたな。餓えに苦しむ柴又の民衆に代って、天罰を与える!」。ピストルで悪人どもを撃つ車寅次郎。喜ぶ柴又の民衆。「柴又村の皆さん! もう大丈夫です。ここに我が同志は立ちあがった!」・・・・・フェリーの中で目を覚ます寅さん。
 
三越デパートの紙袋を抱えて「とらや」に帰ってきた櫻。明日から行く「とらや」一家の九州旅行の為の買物である。おいちゃんは寅さんの事を考えると気分がすぐれないらしい。万が一旅行中に寅さんが帰ってくると面倒な事になる。それを考えると憂鬱になるのであった。
案の定、その事をタコ社長に話していると寅さんが突然帰ってきた。
「とらや」の面々は夜になっても明日から旅行に行く事を寅さんに言えずにいた。そこへ御前様が餞別を持って「とらや」にやってきた。御前様が「寅が留守番をすればいい」と話したところで、みんなで旅行に行く事が寅さんにばれてしまった。これは寅さんに話が伝わるケースとしては最悪である。
どうして最初から言わなかったのかと怒り出す寅さん!おばちゃんが泣き出し、櫻と博が何とか寅さんをなだめて一件落着となった。そして寅さんが一人で留守番をし、「とらや」一家は翌日から九州旅行に出掛ける事になった。
出掛けた日の夜、旅行を楽しんだ一行は寅さんに電話する事をすっかり忘れていた。夜の8時を回ってから電話の事を思い出し、「とらや」に電話すると酔っ払いながら怒っている寅さんが電話に出た。家族のみんなを一人づつ電話に出させ、なかなか電話を切らない寅さん。小さな満男まで電話に出させる始末で、結局電話代を2,800円も使うハメになった。
2日目の夜、「とらや」に電話するとまた寅さんが突っかかってきた。電話口でおいちゃんと喧嘩になり、家を出ようとするが誰もいない事を思い出してか、寂しくて自分の部屋に篭ってしまった。みんなが帰ってくる日、寅さんは風呂を沸かしてシャケの切身とお新香を用意し、部屋の片付けまでしてみんなを優しく出迎えた。


江戸川土手の歩道を歩く櫻と満男。土手の斜面に寝そべっている男が一人、櫻をじっと見つめている。怪しい男だと思った櫻は満男の手を取り急いで「とやら」に帰った。男は櫻の後を追って「とらや」の近くまでやってきた。変な男が追いかけてくるとおばちゃんに言うとすぐに寅さんを呼び、「とらや」の店先まで来ていたその男を羽交い締めにした。しかしその男は痴漢などではなく、寅さんの小学校時代の同級生の柳文彦(前田武彦)だった。文彦は羽交い締めにされた時に思わず寅さんの名前を呼び、難を逃れた。
前田武彦さん扮する柳文彦は金持ちの坊ちゃん同級生というキャラクターがピッタリ!通称デベソの柳文彦は小さい頃は父が開業医をやっており、いつも石鹸の匂いをプンプンさせた裕福な子供だった。しかし今は医院もなくなり、放送作家をやりながら細々と暮らしている。再会した二人は意気投合し、文彦の家まで行って酒を酌み交わした。二人が酒を飲んでいる家には文彦の妹・りつ子(マドンナ・岸恵子)が住んでおり、絵を書いて生計を立てていた。
寅さんと文彦は酒を酌み交わしながら昔の事を思い出し、二人で「キリギリスの唄」を合唱するのである。
♪柱の傷はキリギ~リ~ス~、五月いつか~のキリギ~リ~ス~
これは「背くらべ」の替え唄で、キリギリスのような痩せた女先生に対して悪戯心で作った唄である。しかしその先生は寅さんを呼びつけ、ピアノを弾いて泣きながら自分でこの唄を唄ったらしい。それを見た寅さんはどうして良いかわからず、「へへ~」と笑うしかなかった。これは女先生と寅さんの感情の交差点である。寅さんの思い出話を聞くだけで情景が思い出され、やはり印象に焼きついてしまうシーンである。

りつ子の書きかけの絵を何気なく触った寅さんは、誤って絵に絵具を塗ってしまった。そこへちょうどりつ子が帰ってきた。絵具を塗られた自分の絵を見て怒りだすりつ子。謝っても許してくれないりつ子の態度に寅さんも怒りだし、寅さんはそのまま家に帰ってしまった。妹に対し、「あいつの事、許してやってくれよ」という辺りは前田武彦さんの優しい性格が滲み出ているような気がする。その事が第12作に対する印象を一層強くしているのであろう。
夜になっても昼間の事で気分が冴えない寅さんは、不機嫌なまま自分の部屋に篭ってしまった。
同級生の柳文彦は以後の第28作にも同窓会シーンで登場するが、しかしそこでは寅さんの事を毛嫌いしている。恐らくそれは第12作の終盤で元気を無くした寅さんを心配し、ワンカップを持って行ったにもかかわらずそれを放り投げられた事を根に持っていたからかもしれない。または第12作では仲の良い振りをしていて実は寅さんが大嫌いだったか、または第28作の同級生達に相づちを打つつもりで寅さんの悪口を言ったか、その辺りの真相はわからない。しかし私は酒を飲みながら昔話に酔いしれていた時の二人の気持ちを信じたい。
しばらくしてりつ子が一人で「とらや」にやって来た。追い返して塩をまくつもりでいた寅さんだったが、女らしい優しい態度のりつ子を見たとたん、そんな気持ちはいっぺんに引っくり返ってしまった。「とらや」で食事をしながらりつ子と話している内に、例によって寅さんはりつ子に惚れてしまったようである。
ある日りつ子は画商の一条(津川雅彦)と「とらや」で待ち合わせをした。何だかんだ言いながら二人の話に首を突っ込もうとする寅さんに、二人っきりで話をさせて欲しいと一条が言い放った。てっきり振られたと思った寅さんは旅支度をするが、りつ子が一条は大嫌いだと言った事により旅に出るのは直前でお預けとなった。
りつ子にはかねてから心に想う男がいたが、その男が金持ちの女性と結婚する事になった。りつ子は食事も喉を通らなくなり、失恋の痛手でついに寝込んでしまった。寅さんがりつ子を見舞って家を訪ねた時に、りつ子から失恋した事を知らされた。話を聞かされた寅さんはショックを受け、結局寅さんも失恋の症状が出てしまい、寝込む事となった。
今度はりつ子が寅さんを見舞って「とらや」までやってきたが、意識がもうろうとする寅さんはりつ子を櫻だと勘違いし、りつ子に惚れている意味の事を本人の目の前で言ってしまった。それを聞いたりつ子はその場に居られず、すぐに帰ってしまった。
その後寅さんはりつ子を訪ね、自分の失態を弁解するような話をした。しかしりつ子から「友達でいたい」などとあっさり言われてしまい、結局は振られる結末となった。「とらや」に帰った寅さんは旅支度をし、寒空の下また旅に出て行くのであった。

 
ところでこの作品には不思議な点がいくつかある。一つ目は主題歌が流れている時のテロップの中のおいちゃんの名前が"龍造"になっている事である。おいちゃんの名前は"竜造"のはずである。この点については単なる間違いか、それとも何か思惑があっての事なのか、以後の作品を見直す際に注目したいと思う。
二つ目はおばちゃんの「あたしゃ箱根より西へ行くのは初めてなんだからね」というセリフである。おばちゃんは第3作で三重県の湯の山温泉においちゃんと二人で旅行に出掛けている。これはどう考えれば良いのだろうか。第3作のおいちゃんは森川信さんであり、第12作のおいちゃんは松村達雄さんである。この違いが何か関係あるのだろうか。
三つ目は旅のシーンの寅さんと「とらや」一家が逆になっている点である。多くの作品は序盤で寅さんが「とらや」に帰ってきた後に喧嘩となり、寅さんが土産を櫻に放り投げるなどして再び旅に出ていくのが定番である。第12作も喧嘩するところまでは例に同じだが、その後寅さんが留守番をして家族が旅に出る。家族が旅先にいると思うと寅さんは心配になり、電話が待ち遠しくなる。これは普段から家族に心配ばかりかけている寅さんにとっては骨身に凍みる体験だったに違いない。その結果風呂を沸かすなどして家族を立派に出迎えているのである。もちろん一時的なものではあるが。

前作ではリリーという強烈な個性を持ったマドンナが登場したが、第12作にはそのような激しい部分はない。むしろ柔らかい感じの作品に仕上がっていると感じる。しかしながらマドンナの気質はただの優しい女性ではなく、自立した、男負けしない強い女性像を意識している。この点は前作のマドンナ・リリーの流れが残っているのだろうか。 
 

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