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第7作 「男はつらいよ」 奮闘編 1971年(昭和46年)
寅さんの母・お菊さん(ミヤコ蝶々)が
京都から突然「とらや」にやってきた。
母親の登場は第2作以来である。
一年程前、寅さんから所帯を持つかもしれないと書かれたハガキをもらい、その事が気になって寅さんに会いに来たのである。
しかし寅さんは旅から帰っておらず、そこに満男を連れてさくらが
「とらや」にやってきた。さすが親子!あわて者です。
さくらを寅さんの嫁と勘違いしてしまうんですから!
また二人の挨拶がおかしい(^^)
さくら「お兄ちゃんの妹、さくらです。はじめまして」
お菊「寅の母親の菊です」
「関係ありそうで全然関係のない赤の他人」なのです。
寅さんの嫁はどこかと聞かれ、戸惑う三人!
おいちゃん、おばちゃん、さくらの三人は(1作から5作までのマドンナ)一年前と言うと
豆腐屋の節子さん(5作)じゃないか?
幼稚園の春子先生(4作)じゃないか?
散歩先生のお嬢さんの夏子さん(2作)じゃないか?
御前様のお嬢さん(1作)じゃないかと・・・
結局は今だに独身だと聞かされたお菊はがっかりしてしまう。
お菊さんは帝国ホテルに泊っているからと、寅さんが帰ってきたら伝えて欲しいと言い残してホテルに帰った。
お菊さんが帰ってからすぐに寅さんが柴又に帰ってきた。
おいちゃんからお菊さんの話を聞かされた寅さんだが、
会っても話す事はないと言いお菊さんに会いに行こうとしない。
夜、みんなが真剣にお菊さんの話をしているのに寅さんが大きな「屁」をしてしまいさくらが泣き出し、「寅さん 対 家族全員」のバトルに発展してしまった。
結局、寅さんは母親に会いに行く事になったのだが・・・
帝国ホテルの部屋でお菊さんと再会した時の寅さん。
これが又おかしい!!態度がまるで子供である。
お菊さんがさくらに昔話をしている時の寅さんはベットで遊んでみたり実におかしい。お菊さんはそんなだらしない態度に我慢できず、思わず寅さんを怒鳴ってしまった。その事でお菊さんと喧嘩になり、気を悪くした寅さんは例によって旅に出る事となった。
旅先の沼津で駅の近くの小汚いラーメン屋でラーメンを食べる寅さん。隣でラーメンを食べている若い女の子に駅までの道を聞かれ、親切に教える寅さん。女の子が店を出ると、店主(柳家小さん)が「あの女の子は頭が少し足りない」のだと言う。ラーメン屋を出て駅に向かう寅さんは、駅前の交番の中で泣いているさっきの女の子が目に入った。黙って放っておけない寅さんは、きつい質問をする巡査(犬塚弘)に代わり、女の子に優しく質問した。
女の子の名前は花子(マドンナ・榊原るみ)で実家は青森らしい。
紡績工場で働いていたが、何かの事情でバーの様な店で働かされ、どうやらそこから逃げ出してきたらしい。
寅さんは巡査と相談し、その夜の夜行列車で花子を青森まで帰してやる事にした。沼津駅で切符を買って花子に渡し、上野駅での乗り換えなどを教えた。そして東京で迷ったら「とらや」に行くようにとメモを渡し、花子を列車に乗せたのである。
翌日、花子は早速「とらや」にやってきた。
おいちゃん達はどういう経緯で花子がとらやに来たのか全くわからず、途方にくれてしまった。
青森出身だという事だけは花子の話でわかったので、とりあえず青森の役場に手紙を出し、役場からの返事を待つ事にした。
しばらくして寅さんが柴又に帰ってきた。
花子が「とらや」にいるかもしれないと思った寅さんは、
付け髭に色メガネをかけて「とらや」の前を行ったり来たりする。
変装したつもりらしいが、どこから見ても寅さんにしか見えない。
寅さんはすぐそばの公衆電話から「とらや」に電話を入れ、花子がいる事を知ると変装したままで「とらや」に掛け込む。
その時の慌てぶりと顔つきは二度と忘れる事ができない滑稽な光景である。 付け髭と色メガネで変装した寅さんであったが、「とらや」に来ている花子を見て涙を流して花子との再会を喜んだのであった。
花子が知恵遅れの障害者である事は既にみんな知っている。
その花子を寅さんは「とらや」に置くと言い出した。
もちろん誰も賛成はしないが、誰も寅さんを止める事はできない。
寅さんは花子に仕事をさせてやろうと思い、朝日印刷や題経寺に連れて行った。しかしタコ社長や御前様がスケベ心を出すのではないかと思い、すぐに花子を連れ戻してしまう。結局「とらや」で仕事をさせる事にしたが、店の客が花子に声を掛けた事で揉め事が起き、結果的にそれもダメになってしまった。
そんな事をしている内に寅さんは花子の面倒を一生見てやると言い出し、結婚まで決意してしまったのである。
寅さんと花子は二人で仲良くデパートに出掛けるなどしてまるで恋人同志である。
妹のさくらとしては寅さんの希望通りに結婚させてやりたいところではあるが、おいちゃんとおばちゃんは反対である。
それは当然の事で、どこから来たのかも良くわからない相手と結婚などできるはずがない。
そしてある日、青森から花子の恩師である福士先生(田中邦衛)が「とらや」を訪ねてきた。
青森の役場に送った手紙で花子の事がわかったのである。
福士先生はどうしてもその日の列車で花子を連れて帰りたいと言い、寅さんに会わずに花子は青森に帰ってしまった。
商売から帰ってきた寅さんは花子がいない事に気がつき血相を変えた。さくらの話で花子が青森に帰った事を知り、驚いた寅さんはすぐに旅に出る準備をして花子の後を追うようにして「とらや」を飛び出した。
ある雨降りの日、寅さんからハガキが届いた。
ハガキの内容から察すると、寅さんは自殺を考えている様な内容である。ハガキの中に「花子と会った」と書いてあるので、寅さんは青森にいるらしい。心配になったさくらはすぐに青森にまで行く事にした。
さくらは福士先生の学校に行き、寅さんが訪ねてきた話を福士先生から聞いた。しかし寅さんはその後どこに行ったのかさっぱりわからない。
心配しながらバスに乗っていると、どこかの停留所からおばちゃん連中といっしょに寅さんが、さくらの心配とは裏腹に何時もの調子でおばちゃんたちと冗談を言いながらバスに乗ってきた。
さくらの顔を見てびっくりする寅さん!
二人の乗ったバスは田舎道をゆっくりと走って行った。
第7作は重いテーマの作品のような気がする。
喜劇映画に障害者をテーマとするのはどうなのかと思うが。
なぜなら障害者を見ると可哀相な気持ちになり、その後の喜劇を腹の底から笑えなくなってしまう。
これは差別や哀れみではなく、人間として自然に感じる感情である。
しかしそれをあえてやったという事は、山田洋次監督は何かを伝えたかったのだろうか?
知恵遅れの障害を持つマドンナ・花子が最初に登場するのはラーメン屋である。店の客は花子と寅さんの二人だけ。
花子がラーメンを食べて店を出た後、ラーメン屋の店主が寅さんにこんな事を言った。
『お客さん、あの子ね、ここ(頭)が少しおかしいよ。
そりゃね、ちょっと見には可愛い女の子で通るけども、良く見てごらんよ、目なんざさ、変にこう間が抜けててさ、確かありゃあ、どっかの紡績工場から逃げ出したに違いないよ。今人手不足だからね、工場の人事課長かなんかが田舎行って、それでまぁ、ちょいと変な子だけども頭数だけ揃えておきゃあってんで引っぱってきたようなものの、人並みに働かねぇ。しょっちゅう叱られてばかりいて嫌になって逃げ出すってやつだ。その内にまぁ、悪い男かなんかに騙されて、バーだキャバレーだ、挙句の果てにゃあ、ストリップかなんかに売り飛ばされちゃうんじゃねぇかなぁ、可哀相だなぁ』
(オープニングの集団就職のシーンとここで繋がる訳である。)
このラーメン屋の店主のセリフはかなりきついセリフである。
例え他人事のセリフと言えども何故ここまできついセリフを入れたのか。
そして寅さんが花子との結婚を決意した時のおいちゃん達の話し合いの中にも障害者を差別するかの様なセリフが入っている。
しかし、終盤に花子を連れ戻しに青森からやって来た教師・福士先生のセリフで、このきつい雰囲気がひっくり返される事になる。
福士先生のセリフはこうである。
『私としては、特別扱いする事なく、人間として生きていく自信を与えてやりたいと、そう思いまして、つまり、ああいう障害児にこそ、密度の濃い教育が必要であると、そう思いまして・・・』
先のラーメン屋の店主の話は極端ではあるが考えられる発想かもしれない。
誰かが手を差し伸べなければ本当にそうなる人がいるかもしれない。
そこで福士先生のような人が必要となるのである。
これは想像に過ぎないが、ここにこの作品の言いたい事が表現されており、そして山田洋次監督はその辺のところを強く訴えたかったのではないかと感じる作品だと思う。