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「男はつらいよ」全48作を完全制覇への道!!
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第11作「男はつらいよ」寅次郎忘れな草
          

11.jpg

1973年(昭和48年)

冒頭の夢
借金の肩に娘を連れて行かれる貧しい農村一家。娘が連れて行かれるその直前、家に小判が放り込まれた。見ると御政道に逆らってお尋ね者となった我が長男、寅次郎である。妹・櫻の問いかけに対し、「何かのお間違いじゃあございませんでしょうか。あっしはこの柴又村には、何の関わりも持たねぇ、旅がらすでございますよ」と言いきる寅次郎。背を向ける寅次郎に娘を連れに来た御政道の使い手が襲いかかる。二人をたたっ切る寅次郎。「お天とう様は見ているぜい!」・・・・・雨降りの中、空き家の軒下で目を覚ます寅さん。 

父親の27回忌の日に寅さんが帰ってきた。お経を上げる御前様の声が玄関先まで聞こえ、てっきりおいちゃんが死んだと思った寅さんは慌てて中に入る。みんなといっしょに手を合わせ、何気なく横を見るとおいちゃんが座っている。話しを聞いてみると父親の27回忌の法事だと言う。それを聞いてほっとした寅さんは、御前様が真面目にお経を上げている最中に悪ふざけをし、御前様をカンカンに怒らせて法事をメチャクチャにしてしまった。
満男も幼稚園に行く歳になり、櫻は満男にピアノを買ってやりたくて仕方がなかった。しかし金銭的な事情から買えない。その事を博と話していると、寅さんがやってきてピアノぐらい買ってやれという。ぐずぐずしている博と櫻の態度を見兼ねた寅さんは、すぐにおもちゃのピアノを買ってきた。櫻が欲しいのは本物のピアノである。しかし、勘違いとは言え寅さんの行為を無にはできず、ありがたく受け取る事にした。ところが夜になってタコ社長が余計な一言を言った為に、欲しかったのは本物のピアノだという事が寅さんにばれてしまった。寅さんは不愉快になり、結局その事が切っ掛けでおいちゃんと喧嘩してしまい、例によって「とらや」を出る事になった。

北海道の大自然の中を歩く寅さん。夜汽車で網走まで移動し、レコードの売をするがさっぱり売れない。橋の欄干にもたれてぼんやりしていると、一人の女が声を掛けてきた。レコード歌手のリリー(浅丘ルリ子)である。聞けばリリーも寅さん同様フーテン暮らしのようである。港でリリーと話しをしている内に、寅さんにはリリーが自分と同じ種類の人間に思えてきた。寅さんはリリーに生まれと名前だけ伝え、その場で別れた。

雨の柴又。おいちゃんはパチンコ屋に行ったっきり帰って来ない。そこへ北海道から速達が届いた。手紙の内容によれば、寅さんは北海道のとある開拓部落で酪農の手伝いをしているらしい。しかし三日目に熱を出して倒れてしまい、寝込んでいるとの事である。博と相談した結果、櫻は寅さんを見舞って北海道まで行く事にした。櫻に連れられて「とらや」に帰ってきた寅さんであるが、まだ体調は良くないらしい。ちょっとした事で家族と喧嘩し、弾みでまた家を出ようとしたところへ網走で知り合ったリリーが訪ねてきた。リリーと再会して気分が良くなった寅さんは、そのまま「とらや」に留まる事になった。

しばらくして、別な日にまたリリーが訪ねてきた。その夜リリーは「とらや」のみんなと楽しく食事をし、「とらや」に一晩泊まる事になった。さらに別な日の夜中、リリーは酔っ払って「とらや」にやってきた。仕事で嫌な事があったらしく、かなりの荒れ模様である。リリーをなだめる寅さんだが、リリーは昂ぶるばかりで大声を出して泣きながら帰ってしまった。その後寅さんはリリーのアパートを訪ねたが、すでにリリーはアパートを引き払ってどこかに行ってしまった後だった。その夜寅さんは旅に出る決心をし、上野駅構内の大衆食堂まで櫻にカバンを持ってきてもらった。

ある日とらやにリリーから寅さん宛ての手紙が届いた。手紙にはリリーは結婚してお店の女将になったと書かれていた。櫻はリリーの嫁いだ千葉の寿司屋を訪ね、元気そうなリリーの姿を見てほっとしたのであった。一方寅さんの方は再び北海道の開拓部落に顔を出し、大きな麦藁帽子をかぶり気まぐれな労働に精を出すのであった。
 
第11作のマドンナの性質はシリーズ始まって以来の重大な方向転換であると言える。マドンナが清純な女性ではなく、寅さん公認のフーテン女であるという事。本来ならば寅さんはこの手の女性には興味はないはずである。しかしフーテン同志であればこそ、お互いの気持ちが通じ合うという部分もある。この点がこの作品の最大の特徴ではないだろうか。
この作品のロケ地は北海道網走である。第5作でも北海道がロケ地として使われているが、11作のように北海道の大自然は表現されていない。11作では大自然の中を壮大なBGMに載せて寅さんが歩くシーンがあり、このシーンは寂しげな旅情を堪能できるシーンである。野原に寝っ転がる寅さん、牧場、夕日、夜汽車・・・。これらのカットを見るたびに思うのは「男はつらいよ」の奥の深さである。この奥深さは何度見てもうまく表現できない。

面白い事に気がついた。リリーと寅さんが初めて会うのは網走のどこかの橋の上である。二人は近くの港まで歩き、漁に出る漁船を眺めながら座って話をする。すぐにリリーが仕事の時間となり、二人はそこで別れるが、地面に座って話をしていた為にリリーの白いズボンの尻が少し汚れる。その後リリーが「とらや」を訪ねて来た時も同じ汚れがズボンに残っているのである。これは、リリーがフーテン女なのでズボンの洗濯などマメにできないという事として解釈すれば良いのだろうか?たとえこれが演出ではなく偶然だったとしても、そこまで考えるとさらにこの映画が楽しめる。

興味深いシーンがある。それはタコ社長の工場で働く水原君と恋人めぐみちゃんとの絡みである。同郷を理由に、近所で働くめぐみちゃんが工場で働く水原君を度々訪ねてくる。お互いに好き合っている事は一目瞭然である。しかしお互いに言い出せない。結局は水原君が江戸川土手で告白する事になるが、この告白のシチュエーションは第39作「知床慕情」を連想させる。周りに座り込んでいる仲間に対して一旦背を向け、その後振り返って告白する。第39作の告白シーンは11作の江戸川土手のシーンをモチーフにしているのだろう。

前作までのマドンナを全て回想するシーンがある。このシーンは「とらや」の団欒シーンの中に出てくるが、やはり過去の作品を思い出させてくれるシーンはファンとしては嬉しい事である。 

この作品の見所はやはり、リリーの生き方であろう。同じフーテンでも寅さんとの境遇の違いも見所かもしれない。リリーが酔っぱらって「とらや」を訪ねた時に寅さんに向かって吐いた言葉にもあるように、寅さんには「とらや」という帰るべき家があり、またそこで待っている人達もいる。しかしリリーの帰る先は安アパートで、待っている人などいない。寅さんがリリーのアパートを訪ねてみたが、リリーは既にアパートを引き払っており、リリーが昨日まで使っていた小物が部屋中に散らかっている。これを見た寅さんは一人暮しの寂しさをひしひしと感じ、そこで初めてリリーの気持ちがわかったに違いない。しかしラス
トでリリーは結婚し、千葉の寿司屋の女将となる。この点は寅さんが考えている以上にリリーは強かでしっかりした女である事を表現している。これらを考え合わせると、この作品はリリーを通し、女性の強かさ、弱さ、そして自立心を表現しているのではないかと感じる。リリーの出演はさらに第15作へと続く。 
 


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