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第1・第2作で、車寅次郎という人間がどんな人間か明らかになる。
第1作: 亡き父にダブらせる故郷への想いとさすらい人としての寅。
第2作: 生みの母の愛、恩師の師弟愛に恵まれた幸福な寅。
1年ぶりに柴又「とらや」に帰って来た寅さんだが皆が止めるのも聞かず直ぐに旅にでる・・・
はずだったが!!20数年ぶりに中学時代の英語の先生、坪内散歩(東野英治郎)に再開する。
そして今回のマドンナ役は、幼なじみで坪内散歩の娘/夏子(佐藤オリエ)
38年ぶりに実母のお菊(ミヤコ蝶々)と再会した寅さんだが、お菊に「金なら無い」などと頭から言われてしまい、その場で大喧嘩!
再会した親子が涙ぐましい雰囲気になりそうな気配を一瞬見せるが
予想外の展開に。だがこのシーンは単にそれだけではなく、もっと深い意味が込められているように思う。
坪内散歩先生が亡くなって泣いて塞ぎ込んでいる寅さんに御前様の渇が入った。
「一番悲しいのは娘の夏子の筈なのに夏子は全然泣いていないのに、お前は何をやっとる!」この言葉で寅さんは目覚め、葬式に奮闘努力する、いつものお調子者の寅さん!
勿論それは夏子への思いがあるからこそではあるが・・・
葬式の途中、藤村医師(山崎務)の胸で泣いている夏子を見たとたん、寅さんの夏子への思いは絶たれる。
次から次へと悲しい出来事が寅さんの身の回りで起こり、葬式の後でさくらを前にした寅さんは男泣きしてしまう。
このシーンでは寅さんが妹のさくらに母性を感じている事がわかる。
誰も分かってくれなくても妹だけは分かってくれる。
理屈抜きで理解してくれる人は寅さんにとって、さくら以外、他にはいないのではないでしょうか。
その後、夏子はめでたく藤村医師と結婚し、新婚旅行で京都に行った時、夏子が京都で目にした光景は、寅さんが母親のお菊と楽しそうに歩いている姿であった。
笑えるシーンは寅さんが母親に冷たくされて柴又に帰ってくるあたりで。
「とらや」の面々は寅さんが母親に冷たくされた事を知っているので、博ができるだけ「母」とか「おかあさん」といった言葉は使わない様にとみんなに言う。
そこへハンカチを顔に当てたままの寅さんが夏子に肩を支えられながら「とらや」に帰ってくる。
たったそれだけの演出でも何故か笑えてしまうところが「男はつらいよ」の魅力的なところである。
茶の間に座ってもまだハンカチを顔に当てたまま何も話さない。誰かが気を遣って何か話すと、話題がいつの間にか「母親」の事になってしまう。その度に寅さんはハンカチを顔に強く押し当てる。考えてみれば凄くわざとらしい演出かもしれない。
第1作・2作のマドンナは寅さんの「幼なじみ」
幼なじみが懐かしさをこめて、「寅ちゃ~ん」というその表情を見ると、生きていてよかったという思いを寅さんは抱くにちがいない。
(幼なじみのマドンナには、第10作のお千代坊(八千草薫)と第18作の柳生綾(京マチ子)、第21作の紅奈々子(木の実ナナ)がいる)
マドンナは寅さんにとっては、基本的には淡い思いの対象であって、リアルな愛欲、性欲の対象ではない。
寅さんも男だから、それがまったくないわけではないだろうが、この映画はそんなことを言おうとしているのではない。
もちろん、「男はつらいよ」はマドンナの話ばかりではなく。
人生の四苦八苦をも同時に描こうとする映画だ。
つねに2つのエピソードが折り重なるようにして進行し、やがてひとつの物語になっていく。
そこのところが、「男はつらいよ」シリーズの見所のひとつだと思う。
第2作は「男はつらいよ」が悲劇を絶妙に織り交ぜた素晴らしい喜劇映画だと思う。
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