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「男はつらいよ」全48作を完全制覇への道!!
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■作品データ
公開日 1971年(昭和46年)

■キャスト
マドンナ 池内淳子(喫茶店ロークを経営する未亡人/貴子)
主な出演 ・志村喬(博の父/諏訪飃一郎)
・中沢裕喜(貴子の息子/学)
・吉田義夫(ドサ回り一座の座長/坂東鶴八郎)
・岡本茉利(座長の娘/大空小百合)
・穂積隆信(博の兄)
・梅野春靖(博の兄)
 08.jpg
<りんどうの花>
「あれはもう10年も昔の事だがねぇ
私は信州の安曇野という所に旅をしたんだぁ・・・
バスに乗り遅れて、田舎道を一人で歩いてるうちに
日が暮れちまってね暗い夜道を心細く歩いていると、
ポツンと一軒家の農家が立ってるんだぁ
りんどうの花が庭いっぱいに咲いていてねぇ
開けっぱなした縁側から明かりのついた茶の間で
 家族が食事をしてるのが見える
 まだ食事に来ない子供がいるんだろう
 母親が大きな声でその子供の名前を呼ぶのが聞こえる
 私はね、今でもその情景をありありと思い出す事が出来る
 庭一面に咲いたりんどうの花
 明々と明かりがついた茶の間
 賑やかに食事をする家族たち
 私はその時、それが・・・
 それが本当の人間の生活ってもんじゃないかと
 ふと、そう思ったら急に涙がでてきちゃってねぇ
 人間は絶対に一人じゃ生きていけない・・・さからっちゃいけない
 人間は人間の運命にさからっちゃいかん
 そこに早く気がつかないと不幸な一生を送ることになる
 わかるね・・寅次郎君・・・わかるね・・・」

このりんどうの花の話は、博の父が寅さんに言った言葉ですが、
第8作のテーマじゃないかと思うのです。

四国のとある港町。
雨漏りのする芝居小屋、坂東鶴八郎一座。(吉田義夫)
そこにふらっと現れた寅さん。
秋の長雨で客が一人も来ない。
座長から事情を聞き、宿に帰る事にした寅さん。
雨の中、宿まで傘に入れて送ってくれた座長の娘の大空小百合
(岡本茉利)に小遣いをあげた寅さんだが、
500円札のつもりが5000円札を渡してしまった。
宿の前には「一泊500円」と書かれた看板が・・・。 

これまで主題歌は多少の歌詞の変化はあるものの、前奏中の寅さんの口上に続いて歌が始まる点は基本的に第1作から変わっていない。
しかし第8作の主題歌はそれまでの作品に比べると口上が入る微妙なタイミング、演奏の丁寧さ、そして歌の滑らかさ、これらはどれをとってもそれまで以上の完成度の高さを感じる。

ある日、さくらが近所の八百屋で買い物していると、店の奥から
「勉強しないと寅さんみたいになっちゃうよ」と言いながら子供を躾るのを聞いた。
「とらや」でその事を話し、おいちゃん達と今度寅さんが帰ってきたら優しく迎えてやろうという話になった。
そこへちょうど寅さんが帰ってきた。タコ社長も交じり、「とらや」の面々は大げさな態度で寅さんを迎えた。
その様子を見て何かがおかしいと感じた寅さんは怒り出し朝日印刷で働く博に会いに行く。
ぶつぶつ言いながら印刷されたばかりの紙で顔を拭き、インクが顔につくこれが何度見ても笑えてしまう。
寅さんの表情の変わり加減と職工達の反応が見事に連携し、最後に寅さんが「責任者呼べ! タコ呼べタコ!」と怒鳴りながら出て行く場面は最高におかしいシーンである。

その夜、寅さんは酔っ払った昔の仲間達を「とらや」に連れてきて、さくらにビールを出せと言う。
ビールなんか出さなくていいと言うおいちゃんと寅さんがまた喧嘩になりそうなので何も言わずに寅さんの言いなりになるさくら。
調子に乗った寅さんはさくらに歌を歌わせた。しかし泣きながら唄を唄うさくらの姿を見た寅さんはさすがにいたたまれなくなり、そのまま「とらや」を出てしまった。

ある雨の午後、博の母が危篤だという電報が届いた。
博とさくらが実家のある岡山の備中高梁に掛けつけたが、すでに母は亡くなっていた。
葬式の席、突然寅さんが現れて博とさくらを驚かせた。
寅さんは「とらや」に電話をかけて話を知ったらしい。
寅さんが集合写真のシャッターを押す事になったが、シャッターを押す瞬間つい口が滑り、「はい、笑ってぇ~」と言ってしまう。
さくらに注意されてハッと気がつくが、今度は「はい、泣いてぇ~」と言ってしまう。このシーンは笑えるシーンでありながらハラハラする不思議なシーンでもある。
葬式が終わり、博を含めて4人の兄弟姉妹が集まる。
兄たちは、母は幸せだったと言うが、博は違うと言う母は子供の頃からの夢があったが父と結婚したことで夢を諦めたんだと冷淡な感情を表現するニ人の兄に対し、博は父も気がつかなかった母の本心を泣きながら訴える。
 
一人っきりになった博の父・諏訪飃一郎(すわひょういちろう)(志村 喬)の事が心配になった寅さんは、しばらくの間備中高梁にいる事にした。ある夜、ひょう一郎と酒を飲んでいる席でひょう一郎からりんどうの花の話を聞かされた寅さんは自分の生き方を改心し、すぐに柴又に帰る事にした。

その頃柴又では帝釈天の傍に新しい喫茶店が開業していた。店の主人は小学生の一人息子がいる未亡人・貴子(マドンナ・池内淳子)である。しばらくして寅さんが「とらや」に帰ってきた。帰ってきて早々、新しい喫茶店にコーヒーを飲みに行こうとする寅さんを止めるおいちゃん達。
喫茶店に行って貴子と顔を合わせるとまずい展開になると思ったからである。寅さんは何だかんだ言いながら、おばちゃんの入れたお茶を飲む事になった。
夜「とらや」の茶の間でみんなにりんどうの花の話をする寅さん。博の父に聞かされた話をあたかも自分が体験したかの様に話す。この辺は寅さんの得意技である。

「とらや」の茶の間のシーンにも定着を感じる。
茶の間のシーンはこれまでの作品でも必ずあったが、
この作品の中で「とらや」一家の面々が座る位置が以降の作品にも続く事になる。
「とらや」の入り口から右回りで、おばちゃん、おいちゃん、寅さん、博、さくらの順となる。
そして場合によっては博の後ろあたりにみんなに尻を向ける形でタコ社長が腰掛ける。
茶の間のシーンは見ていてほっとするシーンであり、随所に喜劇が散りばめられている点は見逃せない。
この作品の茶の間のシーンが以降の作品の原点になっているのは間違いないだろう。

次の日、寅さんが帝釈天をぶらついていると、貴子の一人息子・学(中沢裕喜)が寂しそうに一人で遊んでいた。
寅さんが学に声を掛けていると、貴子が学を連れにきた。突然現れたべっぴんに驚く寅さん。例によって貴子に一目惚れしてしまったらしい。
貴子の店に度々顔を出すようになった寅さんは、一人息子の学といっしょに遊ぶようになり、学の人見知りする性格はとたんに直った。
ある日貴子の喫茶店にいた寅さんは、貴子が借金の事で泣きながら電話で話しているところを見てしまった。
貴子が金に困っていると察した寅さんは、バイで一生懸命稼ごうとするが突然大金が稼げる筈はない。
ある夜、寅さんは貴子の家を訪ねた。貴子にりんどうの花をプレゼントし、ここでもりんどうの花の話をする寅さん。
困った事は何でも相談して欲しいという寅さんの誠意に涙を流して喜ぶ貴子。
しかし、「私も旅について行きたい」という貴子の言葉で現実に引き戻された寅さんは、貴子がお茶を入れている間に帰ってしまった。
「とらや」に戻り、旅の支度をする寅さんは、さくらの思いがけない話で思わず泣いてしまった。
茶の間にいるみんなに達者で暮らすようにと一言残し、寅さんは一人で風の中へと出て行くのであった。

第8作は寅さんとマドンナとの別れにわかりやすい決め手がない。
過去の作品は一部の例外を除き、マドンナに恋人がいる事を知った寅さんが再び旅に出るという結末がほとんどであるが、この作品の場合は少し違う。
寅さんが再び旅に出る結末は同じであるが、その決め手は寅さんの微妙な気持ちの変化である。
マドンナとの会話の中で現実を知り、自分とマドンナの住んでいる世界の違いに気がついた寅さんが自ら身を引いているのである。
これまでの寅さんとマドンナの関係はどちらかというと単純であったが、この作品で初めて寅さんの大人の心理が表現されたのではないか。
以後の作品でもこの手の心理表現がされる作品がいくつかある。第8作はあらゆる意味で「男はつらいよ」の原点が確立されつつある事と、
成熟期に向かって大きく前進した事を実感させられる作品である。
 
第8作の特記すべき点は、おいちゃん役の森川信さんの最後の出演作品だという事である。
おいちゃん役の森川信さんと寅さんのやりとりは第1作の時から絶妙である。
間の取り方が自然で、わざとらしいギャグでも笑えてしまうところが魅力の一つである。
シリーズが安定し、レギュラー出演者の個性も固まってきたところで大黒柱である森川信さんが最後の出演となるのは大変残念な事である。
当時は大勢の人達が森川信さんの死を悲しんだに違いない。
思えば第6作の中で、第9作以降のおいちゃん役となる松村達雄さんと森川信さんとのツーショットがある。
今考えれば、あのシーンがおいちゃん交代のシグナルだったのかもしれない。
第8作中、おばちゃんとの会話の中で、森川信さんが「決まってるじゃないか、死ぬまでよ!」と言うシーンがある。
このシーンも後で見ると何か気に掛かるところである。

見所としては博の父親役の志村喬さんのしみじみとした語りが挙げられる。
第1作の時に博の結婚式で寅さんを大泣きさせるシーンがあったが、この作品でも寅さんに感動を与える長セリフが入る。
そして以後の作品でもう一度寅さんを感動させる事になる。

 


 
 
 

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